こんにちは、ユースケです。
今日は「注文住宅の基礎工事の流れ」について解説します。
戸建て住宅の基礎は4週間~5週間という長い期間をかけて、工事を行います。
ですが長い時間かけてつくった割に、完成後には目立たないのが基礎です。
ではなぜ4週間以上もかけて、基礎をつくるのでしょうか?
その理由は、基礎工事の工程にあります。
そこで今回は、基礎工事の工程について工程順に流れを確認しながら、施主が押さえておくべき基礎知識を確認しましょう。
こちらの記事を読むことで、次の内容がわかります。
注文住宅で使われる直接基礎の形と各部の名称
基礎工事の流れについて確認する前に、まずは基礎に関する各部の名称について解説します。
今回は注文住宅で一般的に用いられる「直接基礎」のなかで、ベタ基礎と布基礎についてのみ取り扱います。
では、各部の名称と建築基準法で定められた数値について解説します。
ベタ基礎の形と名称
ベタ基礎は、底面全体に鉄筋コンクリートを打設して、その上に立ち上がりをつくる基礎です。
底盤コンクリートは、ベースコンクリートともよばれ、建築基準法では厚みが12cm以上になるように定められています。
凍結深度とは、冬場の寒い時期でも凍らない地面の深さのことです。
水分を含む地面が凍ると膨らむため、膨らみによって基礎がかたむくことになります。
凍結深度がどれくらいの深さなのかは地域によって違いますので、詳しく知りたい方は地元の役所で確認してみてください。
捨てコンや防湿シートについては、後ほど詳しく解説します。
今すぐ知りたい方はこちらをクリックして確認してください。
布基礎の形と名称
布基礎とは基礎の断面が逆T字型になっている基礎のことです。
布基礎とベタ基礎のベースコンクリートの位置に注目してみてください。
ベタ基礎ではベースコンクリートが全体に広がっており、布基礎は立ち上がり部分の下のみにあります。
布基礎でも基礎の内側にコンクリートを敷くことがありますが、この場合は「防湿コンクリート」と呼ばれます。
防湿コンクリートには、地面から上がる湿気を防ぐ役割がありますが、ベタ基礎のベースコンクリートのような構造的な強度はほとんどありません。
注文住宅の基礎工事を流れで確認!含まれる作業内容や日数
基礎工事にかかる時間は4週間~5週間、新築工事にかかる全工事時間の約3分の1になります。
では具体的にどのような工事が行われるのでしょうか?
各工事の内容について以下の一覧業にまとめました。
興味のある工事がある方は、こちらからクリックして今すぐ確認してみてください。
基礎工事に含まれる工事一覧表 | |
工事名 | 工事日数 |
①地縄張り | 半日~1日 |
②水盛り遣り方 | 1日~2日 |
③根切り | 1日~2日 |
④砕石敷き | 半日~1日 |
⑤防湿シート | |
⑥捨てコンクリート | 半日~1日 |
⑦配筋工事 | 2日~3日 |
⑧外周型枠工事 | 1日 |
⑨ベース部分のコンクリート打設 | |
⑩内部型枠工事 | 3日 |
⑪アンカーボルト設置 | 1日 |
⑫内部のコンクリート打設 | |
⑬湿潤養生 | 夏場は3日以上、冬場は5日以上 |
⑭型枠ばらし | 1日~2日 |
⑮雑コン・仕上げ |
基礎工事の流れ①地縄張り
地縄張りとは、土地に縄をはって建物を配置を決める作業です。
地縄張りは基本的に施主の立ち会いのもとで行い、駐車スペースや隣地との距離などを確認します。
ちなみに地縄張りの語源は、「なわばり」にあるといわれています。
基礎工事の流れ②水盛り遣り方
地縄張りで確認した位置に、建物を水平に建てるための作業を「水盛り遣り方(みずもりやりかた)」と言います。
地面に木製の杭を打って、基準となる高さ(建築用語でGL)に対して水平になるよう糸を張ります。
最近は「レーザーレベル」とよばれる機械を使用して、水平を図るようになりました。
基礎工事の流れ③根切り
根切りとは、基礎の一部を地面に埋め込むために掘削する作業です。
根切りはパワーショベルなどの重機を使って、一定の深さまで地面を掘ります。
作業日数は1日~2日程度ですが、根切りの精度が完成後の家の傾きを大きく左右するため、とても重要な作業でもあります。
施主として根切り確認しておくべきことは、次の3つのことです。
- 根切りした底面が凸凹になっていないか?
- 凍結深度まで根切りが達しているか?
- ごみや産業廃棄物はないか?
震度凍結とは、こちらの図で解説したように冬場でも凍結しない地面の深さです。
ベタ基礎では、根切りした底面が震度凍結まで達しているか確認しましょう。
布基礎では、フーチン部分が凍結線よりも深い位置にあることを確認しましょう。
根切りで、ごみや産業廃棄物が出てくることもあります。
ごみや産業廃棄物は、地質を変化させてしまう可能性が適切に処理する必要があります。
基礎工事の流れ④砕石敷き
砕石敷きとは、細かく砕いた石(割栗石)を敷地全体に敷きつめる作業のことです。
砕石敷きは「地業」とも呼ばれ、機械を使って上から力を加えることで締め固める必要があります。
施主として確認したいポイントは、「砕石を敷いた後の地面が平らになっているか」という点です。
基礎工事の流れ⑤防湿シート
業者によっては、砕石の上に防湿シートを敷くことがあります。
防湿シートを敷くことで、地面から建物に湿気があがらないようにする効果があります。
ベタ基礎の場合には、砕石を敷いた基礎全体に防湿シートを張ります。
布基礎の場合は、防湿コンクリートが代わりの役割を果たすため防湿シート自体を使用しないこともあります。
布基礎で防湿シートを使用する場合には、基礎内側の砕石の上に敷くことが一般的です。
住宅金融支援機構の技術基準として以下のような説明があります。
厚さ0.1mm以上の防湿フィルムまたは厚さ6cm以上のコンクリートを床下に施工すること
つまり、ベタ基礎の場合には防止シート(フィルム)が0.1mm以上の厚みがある必要があります。
ただし0.1mmは防湿シートでは薄いため、基礎工事中に破れてしまう可能性があります。
可能であれば0.1mmよりも厚みのある防湿シートを施工してもらうことをおすすめします。
基礎工事の流れ⑥捨てコンクリート
捨てコンクリートとは、建物を建てる位置をまちがえないように目印をつけるためのコンクリートのことです。
捨てコンの作業日数は半日~1日程度です。
捨てコンを敷いた後は、基礎の目印をつける「墨出し(すみだし)」と呼ばれる作業を行います。
捨てコンをする理由は、次のような意味があるからです。。
- 墨出しを行うための下地(キャンバス)になる
- 地面から上がってくる湿気を防ぐことができる
- 基礎本体の鉄筋がサビることを防ぐ
つまり湿気の多い土地で捨てコンをすることで、将来的に長く安定的な基礎をつくることができます。
ただし敷地の状態が良い場合には、捨てコンを行わずに次の工事に移ることもあります。
また捨てコン自体には、基礎の強度を高めるほどの強度はありません。
基礎工事の流れ⑦配筋工事
捨てコン(あるいは防湿シート)の作業の次は、配筋工事を行います。
墨出しでつけた目印を中心に、鉄筋を組んでいきます。
ベタ基礎の場合、配筋工事には2日~3日ほどかかります。
基礎の強度を大きく左右する作業のため、とても重要な基礎工事だと言えます。
以前は職人さんが手作業で鉄筋1本1本を設置していましたが、最近ではユニット鉄筋とよばれる工法が増えています。
ユニット鉄筋とは、工場である程度のサイズまで組み立てられた鉄筋のことです。
現場ではユニットを組み合わせるための作業がありますが、必要最低限の時間とコストで作業を進めることができます。
基礎工事の配筋工事では、工事後に配筋検査を行います。
配筋検査とは、第三者機関の検査員が「施工図に従って適切な配筋を行っているか」を確認する作業です。
基礎工事の流れ⑧外周型枠工事
配筋工事の次は、「基礎外周の型枠工事」を行います。
外周型枠工事では、基礎のベース部分となる箇所のコンクリートを打設するとき、コンクリートが流れ出ないようにするための立ち上がりを作ります。
外周型枠工事は、およそ1日程度ほどかかります。
住宅の型枠工事では、主に木製のものが使われますが、業者によって鋼製のものを使う場合があります。
基礎工事の流れ⑨ベース部分コンクリート打設
外周型枠工事の次は、ベース部分のコンクリートを打設します。
コンクリート打設とは、生コンクリート(やわらかい状態のコンクリート)を型枠の中に流しこみ、振動をあたえながら空気や水分を追い出す作業です。
かつては竹の棒などで振動をあたえていましたが、現在ではバイブレーターとよばれる振動装置を使うことが一般的になりました。
基礎のベース部分になるコンクリートを「ベースコンクリート」と言います。
ベースコンクリートの打設は、外周型枠工事を行った日に行われることが多いです。
ベースコンクリートは基礎の種類によって位置が違いますが、いずれも建物荷重を地面に分散させる役割があります。
基礎工事の流れ⑩内部型枠工事
ベースコンクリートの次は、基礎内部の立ち上がりをつくるための型枠工事を行います。
内部の型枠とは、建物の室内部分にある柱や内壁を支える基礎のことです。
内部型枠は外周型枠に比べると型枠の量が多く、3日程度かかります。
基礎工事の流れ⑩アンカーボルト設置
アンカーボルトとは、基礎と土台をつなぐ金物のことです。
アンカーボルトで土台を基礎に固定することができ、基礎からズレないようにします。
基礎工事では、立ち上がり部分の型枠にアンカーボルトを仕込みます。
その後コンクリートを型枠に流し込み、基礎に固定されます。
アンカーボルトの設置には、次の2つの方法があります。
- コンクリートの打設前に設置する
- コンクリートを流し込んで固まる前に設置する
当然ですが、後者よりも前者のような事前に設置する方がアンカーボルトの設置位置が確実です。
もしアンカーボルトボルトの位置がズレたままコンクリートが固まると、土台となる木材にうまく固定ができません。
住宅金融支援機構の仕様書にも、アンカーボルトは前者のように打設前に設置するように指摘しています。
施主として「アンカーボルトの設置が打設前に行われているかどうか」の確認をおすすめします。
基礎工事の流れ⑪内部コンクリート打設
アンカーボルトの次は、内部のコンクリートを打設します。
内部コンクリートの打設には、1日程度かかります。
またコンクリートを打設したとき、土台を置くことになる基礎の天端はなるべく水平にしておく必要があります。
最近では「レベラー」と呼ばれるモルタル調整材で、水平な面を造ることが一般的です。
かつては左官職人が水平にならす作業を行っていました。
ちなみに立ち上がり部分の天井面を水平にすることを「天端均し(てんばならし)」と言います。
基礎工事の流れ⑫湿潤養生
基礎コンクリートの打設の次は、養生を行います。
「硬いコンクリートに養生なんて必要なの?」と思うかもしれませんが、コンクリートが建物の荷重に耐えられるほど固くなるまでには時間がかかります。
コンクリートに養生をすることで、十分な水分と適切な温度に保つ効果があります。
コンクリートの養生方法にはいくつかの種類がありますが、木造住宅の基礎工事で使われる方法は、「湿潤養生」が主流です。
湿潤養生とは、コンクリートが乾燥することを防ぐために、常に水分を与えるという養生方法です。
コンクリートの養生期間について、土木学会が提供する「コンクリート標準示方書」では次のように定められています。
コンクリートの養生期間 | |||
日平均気温 | 普通セメント | 混合セメントB種 | 早強ポルトランドセメント |
15℃以上 | 5日 | 7日 | 3日 |
10℃以上 | 7日 | 9日 | 4日 |
5℃以上 | 9日 | 12日 | 5日 |
つまり、必要なコンクリート養生期間は温度やコンクリートの種類によって異なるということです。
夏場などの熱い時期であれば3日~5日程度で、次の工程に進むこともあります。
基礎工事の流れ⑬型枠ばらし
コンクリートが十分に固くなり、強度が出たら型枠をはずします。
型枠のばらしには、半日~1日程度かかります。
型枠のばらし作業は「脱型」と呼ばれ、安全かつ丁寧な作業が求められます。
ばらし後に施主として確認すべきことは、「コールジョインや空洞はないか?」という点です。
コールジョインとは、コンクリートの打設が長時間にわたって重ね打ちしたり、適切な打設が出来ていない場合に発生する現象です。
基礎でコールドジョイントや空洞ができると、耐震性の低下につながるため注意が必要です。
基礎工事の流れ⑭雑コン・仕上げ
型枠ばらしの次に、雑コンを打設します。
雑コンとは、住宅本体の構造に直接的に関係しない部分のコンクリートのことです。
雑コンを打設する場所は、玄関ポーチや勝手口の土間、給湯器置き場などです。
雑コントと仕上げ作業が終われば、基礎工事はすべて終了になります。
まとめ
今回は注文住宅の基礎工事について、工程順に工事内容を解説しました。
基礎工事は4週間~5週間ほどかかるため、とても長く感じます。
しかし基礎ができてしまえば、家づくりはあっという間に上棟まで進みます。
基礎は、良い意味でも悪い意味でも目立たない場所にあります。
しかし施主だからこそ、一歩間違えると「砂上の楼閣」になる可能性があるということを理解しておかなければいけません。
どれだけ立派にみえる建物を建てても、砂のような柔らかい基礎の上ではすぐに崩れます。
家は見せかけではなく、暮らしを守るものです。
施主として基礎知識を身につけ、業者まかせにならないように基礎工事を計画しましょう。
今日はこの辺で!