こんにちは、ユースケです。
今回は、建築の骨格を作る工事である「建築主体工事」の費用について解説します。
建築主体工事費は、建築本体工事費(住宅本体を建てるための費用)の中で一番大きな費用です。
注文住宅の費用をうまく予算内に収めるためには、建築主体工事費が鍵になることは間違いありません。
しかし、建築主体工事はいくつかの工事で構成されています。
そのため、「各工事がどのような内容で契約されているのか」が不明確になり、ブラックボックス化しやすいという問題もあります。
注文住宅の施主として、契約内容に問題ないのか把握するために、「建築主体工事とは何か」をしっかりと理解しておきましょう。
注文住宅の建築主体工事費の目安は建築本体工事の7割
建築主体工事とは、建築の基本的な要素(柱、梁、床、壁、天井、屋根など)を建築するための工事です。
そのため、家づくりのなかでも最も費用がかかる工事でもあります。
具体的に、「建築主体工事費」は本体工事費の約70%~80%が目安です。
たとえば建設費2000万円の注文住宅ならば、1400万円~1600万円程度が建築主体工事費になります。
残りの3割(600万円~400万円程度)が付帯工事や建築本体工事に関わる諸費用に回ります。
注文住宅の建築主体工事費の内訳
建築主体工事は、次のようないくつかの工事が含まれます。
建築主体工事に含まれる工事の一覧 | |
仮設工事 | 仮設足場・工事用インフラ・水盛り遣り方・養生など |
基礎工事 | 掘削・捨てコン・配筋など |
躯体工事(木工事) | 骨組み・下地・基礎パッキンなど |
屋根工事 | ルーフィング・屋根仕上げなど |
外壁工事 | サイディング・外壁仕上げなど |
防水工事 | 屋根防水・外壁防水・バルコニー防水など |
塗装工事 | ペンキ・下地処理など |
石・タイル工事 | 石張り・タイル張りなど |
内装工事 | 壁紙クロス・クッションフロア―など |
住宅設備工事(住設) | システムキッチン・ユニットバスなど |
建具工事 | 鋼製建具・木製建具など |
樋(とい)工事 | 軒樋・竪樋など |
金物工事 | 物干し金物・軒先換気・アルミ笠木など |
家具工事 | 造作家具・ |
建材 | 木材・断熱材・石膏ボードなど |
雑工事 | 防蟻処理・畳・手すりなど |
建築主体工事費①仮設工事費
仮設工事とは、工事に必要な機器や設備を一時的に仮設するための工事です。
また、これらの機器や設備は工事終了後に撤去されます。
つまり、形として残らないため、施主からすれば「なぜこの費用が必要だったのか?」と思ってしまうことがあります。
しかし、現場の職人が「安全安心に」かつ「効率的に」家づくりを行うために必要な費用なのです。
具体的に仮設する機器や作業は、次のようなものです。
- 水盛り遣り方
- 仮設足場
- 仮設ネット
- 仮設電気
- 仮設水道
- 養生
- 清掃や片付け
- 廃材処分
- 鉄板養生
建築主体工事費②基礎工事費
仮設工事が終わると、続いて行われるのが「基礎工事」です。
基礎工事とは、地面と建物のつなぎ目になる部分の「基礎」を造る工事です。
自動車で言えば、道路に接地している「タイヤ」のような存在です。
どんなにハイスペックなエンジンを積んでいても、タイヤに空気がない車が走れないように、高性能な家でも基礎がしっかりしていなければ長持ちしません。
また車のタイヤは交換可能ですが、家の基礎は交換ができません。
そして、建設後に基礎の仕上がりを確認することが難しいため、専門的な知識と経験を持った職人が行う場合が多いです。
さらに地震大国日本では、2000年の建築基準法改正以降、耐震基準が見直されました。
このことから、「基礎」の基準条件も、地盤によって制限を受けることがあるのです。
つまり、基礎工事は地味ですが、決して油断できない工事だと言うことです。
建築主体工事費③躯体工事費
しっかりとした基礎が立ち上がったら、続いて「躯体工事」に移ります。
躯体工事とは、建築の主要構造となる「躯体」を造る工事のことです。
具体的には、柱や梁などの骨組みを用いたり、木造用の面材(いわゆるパネル)を用いて、耐震性に優れた骨組みを造ります。
見積書などでは、躯体工事の別称として、木造の場合のみ「木工事」と記載されている場合があります。
そして、躯体工事で大切なことの1つが、「耐震性能」です。
ここで1つ木造の耐震性について、例を挙げて考えてみましょう。
例えば、次のような「割り箸」があったとします。
あなたがこの割り箸を2つに割るとき、縦に割りますか?それとも横に割りますか?
多くの方は、横に曲げて割ろうとしますよね。
木材の性質をして、縦方向の圧縮力には強く、横の水平力には弱い傾向があります。
この木材の性質は、木造住宅の躯体でも同じです。
木造の躯体は、縦揺れに比べて横揺れに弱いため、筋交いを入れたり、面材で補強することで耐震性能を高める必要があるのです。
近年では建築技術が向上したことにより、さまざまな種類の構造部材があります。
そのため、工務店や業者によってその手法は異なり、躯体工事費も違ってきます。
建築主体工事費④屋根工事費とは
地震に耐えられる骨組みが出来上がったら、次は「屋根工事」に移ります。
屋根工事は、住宅の快適性を大きく左右する「屋根」の工事です。
なぜ屋根が住まいの快適性を左右するのかというと、屋根が次のような役割を持っているからです。
屋根の役割
防雨・防塵・防火・防風・防雪・防音・遮光・遮熱・遮音・美観
ちなみに建設業許可では、屋根工事とは「瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事」と定義されています。
ただし屋根に使わる材料はさまざまで、工務店や業者によって屋根工事費も異なります。
近年では、太陽光発電システムのためのパネル設置なども増えているため、屋根工事の重要性がさらに高まっています。
建築主体工事費⑤外壁工事費
屋根工事の次に行われる工事が、「外壁工事」です。
外壁工事とは、屋根と同様に自然環境からあなたの身を守る「外壁」の工事です。
また屋根の荷重を基礎に正しく伝えることで、耐震性能にすぐれた家となるため、基礎や躯体の工事と同じぐらい大切な工事です。
近年の住宅では、サイディングと呼ばれる板状の建材を用いて外壁を施工することが主流となっています。
外壁材として性能が高い「サイディング」ですが、メーカーは耐久年数30年としています。
これはあくまでもメーカーが検証した範囲内の数値なので、実際には気候や環境によって耐久年数が異なります。
目安として、サイディングの寿命は10年、長くて20年だと言われてます。
そのため、新築一戸建ての注文住宅で耐久年数30年のサイディングを使用した場合、10年から15年ほどで外壁のメンテナンスが必要になると想定しておくべきでしょう。
建築主体工事費⑥防水工事費
屋根工事や外壁工事と平行して行われる工事が、「防水工事」です。
防水工事とは、屋根や外壁の下地として、雨や水、雪などが家の内部に浸透することを防ぐ工事のことです。
建築の寿命を短くしてしまう原因の1つが、「雨漏れ」です。
木造住宅の場合、雨漏れを放置すると木材の腐食や、強度低下につながります。
雨漏れは、経年劣化によって家の防水機能が起きる場合だけでなく、施工不良によっても発生します。
つまり、新築一戸建ての注文住宅では、事前チェックをしっかり行い、雨漏れが起きないように注意しなければいけません。
特に、防水工事は業者間で「だれが担当して、責任を持つのか」曖昧になりやすい工事でもあります。
そのため、防水工事費を安く見積もりすぎず、丁寧に責任を持って行ってもらえる業者選ぶが大切になります。
建築主体工事費⑦塗装工事費
建物の内側や外側などの塗装を、「塗装工事費」をしてまとめて考えることができます。
塗装工事とは、建物の内側や外側にペンキを塗ったり、塗料を吹き付けたりする工事のことです。
特に外壁の塗装は、定期的なメンテンスが必要になります。
一方内装の塗装は、仕上げとして用いられる他にも、錆止めや下地処理などの工事も含まれます。
ただし、内装の仕上げでは壁紙クロスが主流になりつつあるため、内装で塗装を行う場面はすこしずつ減っています。
建築主体工事費⑧石張り・タイル工事費
仕上材として石材を用いる場合には「石張り工事費」、タイルを用いる場合には「タイル工事費」が必要となります。
建築主体工事費⑨内装工事費
内装工事費とは、内装の壁や床などを仕上げるとき、躯体工事(木工事)や塗装工事などの工事費含まれない費用のことです。
具体的に、以下のような費用が考えられます。
内装工事費に含まれる工事
- 床の仕上げ:フローリング、畳、カーペット
- 壁の仕上げ:ビニールクロス、下地処理
- 天井の仕上げ:ビニールクロス、天井ボード、下地処理
ただし壁や天井の下地処理は、木工事に含まれることが多いため、見積もり書などで事前に確認しておく必要があります。
建築主体工事費⑩住設費(住宅設備工事費)
建築主体工事費のなかでも、事前の入念なチェックが必要な工事が「住設費」です。
住設とは、システムキッチンやユニットバス、洗面化粧台などの住宅に欠かせない設備のことです。
特に注文住宅では、住宅設備を自由に選ぶことができるため、住設費には個人差があります。
住宅設備のアップグレードで、予算オーバーになることもあるので注意してください。
注文住宅で見通しがちな建築主体工事費
注文住宅の建築主体工事費では、メインとなる工事費以外にも個別に発生する工事があります。
たとえば、次のような工事費です。
見落としがちな建築主体工事費
- 建具工事費
- 樋工事費
- 金物工事費
- 家具工事費
- 建材費
- 雑工事費
では1つずつ詳しく解説をします。
見落としがちな建築主体工事費①建具工事費
建具工事とは、ドアや窓などの開口部に取り付けられる建具の工事のことです。
建具工事は、次のように2つの工事に分けられます。
- 鋼製建具工事
- 木製建具工事
鋼製建具には、アルミサッシやシャッターなどが含まれます。
一方木製建具には、クローゼット、室内ドア、ふすまなどが含まれます。
注文住宅は、外装建具なら鋼製、内装建具なら木製が主流になっています。
ただし、自然素材に特化した注文住宅や和紙では、木製建具との相性が良いため、外装建具でも木製建具を使うことがあります。
木製建具は、鋼製建具と比べて大量生産が難しいため費用が高くなる傾向にあります。
注文住宅の総費用を抑えるなら、コスパの良い鋼製建具をおすすめします。
見落としがちな建築主体工事費②樋工事費
「雨樋」は屋根から流れる雨を排水する機能として、住宅を長持ちさせるために重要な役割を持っています。
「雨垂れ石を穿つ(小さな努力でも根気よく続けてやれば、最後には成功する)」
という慣用句になるほど、屋根から直接落ちた雨は地面を削ってしまうほど強い力を持ちます。
つまり雨樋がない住宅では、地面のコンクリートなどがボロボリになり、雨が外壁をつたって住宅の劣化を早めてしまいます。
見た目は地味ですが、重要な役割を持つ「雨樋」は構造部材や外壁などと比べると、費用はかなり小さいと言えます。
雨樋の費用は総費用の1%以下ですが、契約時には契約漏れがないように注意が必要です。
見落としがちな建築主体工事費③金物工事費
意外な建築主体工事費として覚えておきたい費用の3つは、「金物工事費」です。
注文住宅の家づくりで使用される金物には、物干し竿金物やバルコニーのアルミ笠木などがあります。
さらに目立ちにくいですが、軒先換気なども金物に含まれます。
ただし、構造に使用される「接合金物」や建具に使用される「建具金物」はこの費用には含まれません。
金物工事費は、建築主体工事のなかでも特に細かい費用になるため、他の費用にまとめて分類されているケースも多いです。
見落としがちな建築主体工事費④家具工事費
家具工事とは、造り付け家具を設置する工事のことです。
さらにソファーやテーブル、椅子、ベットなど大型家具を設置する費用などが含まれることがあります。
造り付け家具とは、住宅のサイズに合わせてオーダーメイドで造られた家具のことで、建築用語で「造作(ぞうさく)」と呼ばれています。
新築戸建ての住宅で、造作家具を作る方法は以下の2つです。
造作家具を作る方法は2つ!
- 大工工事(現場で家具を製作する)
- 家具工事(工場で製作して、現場に搬入する)
いずれの方法であっても、既成品の家具に比べると割高になるため、予算配分に注意が必要です。
見落としがちな建築主体工事費⑤建材費
注文住宅が建つまでには、構造から仕上げまでざまざまな種類や形の建材が使われます。
例えば、木造住宅の場合には、木工事(木材の加工や組み立て工事)が建築費の40%程度を占めています。
その中で、建材費は25%~50%程度となるため、建築費の15%程度が建材費の目安となります。
また近年では、ウッドショックによる木材価格の高騰など建材コストの上昇が見られます。
見落としがちな建築主体工事費⑥雑工事費
雑工事とは、文字通り、雑多な種類の工事です。
この記事で解説した工事には分類できないような工事が含まれています。
例えば、手すり工事や防腐処理・防蟻処理の費用などが雑工事費に含まれます。
雑工事費で注意すべき点として、「見積もりで雑工事費が高すぎないか?」という点です。
たとえばハウスメーカーから下請けした業者が悪徳業者であった場合には、この「雑工事費」を高く見積もっていることがあります。
雑工事費に含めることで具体的にどのような材料を使って、どれくらいの人件費がかかったのかを曖昧にできるからです。
そのため、施主として注文住宅を建てるときは、雑工事費が高額な請求になっていないか注意してください。
【まとめ】
今回は、注文住宅の建築主体工事について解説しました。
建築主体工事費は、建築本体工事費の約7割を占めます。
つまり、それだけ重要な工事ということですね。
建築主体工事について理解ができた方は、建築本体工事に含まれない費用である「別途付帯工事」もしっかり理解しておきましょう。
別途付帯工事についてさらに詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
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